元白応酬詩札記(8)
こんばんは。
先日来検討してきた白居易「与微之書」(『白氏文集』巻28、1489)ですが、
この書簡の中に記された三韻の詩に対して、
元稹「酬楽天書後三韻」(『元氏長慶集』巻20)はこう応えています。
今日廬峰霞遶寺 今日は廬山の峰で霞が寺を取り囲み、
昔時鸞殿鳳迴書 昔日は金鑾殿で鳳凰が書簡の周りを飛翔していた。
両封相去八年後 二通の封書は八年の時を隔てた後でも、
一種倶云五夜初 うち揃って、五更になったばかりの夜明けの時を詠じている。
漸覚此生都是夢 この人生はすべてが夢だと次第にわかってきた私は、
不能将涙滴双魚 涙を封書に滴らせるわけにはいかない。
白居易から送られた二通の封書は、時間も空間も遠く隔たっているのに、
いつも変わらないのは、それが夜通し書かれたということだ、と元稹は詠じています。
彼の眼には、一晩中、自分を思って手紙をしたためてくれる、
いつも自分の一番の理解者でいてくれる白居易の姿が映じていたのでしょう。
最後の二句は、表面上はクールさを装っているように見えますが、
「不能」という語の中に、懸命に涙をこらえている彼の姿を見たように思いました。
2020年7月16日