日常に美を見出した表現者たち

こんばんは。

『アンリ・ル・シダネル展』カタログ(2011年)を、*
今日、広島市立図書館から借りてきました。
縁あって、来年度、このフランスの画家と絵画に関連する話を、
公開講座のひとつで担当することになったので。

図録や解説を閲覧しながら、
その日常の中に美を見出していく姿勢に惹かれました。
そして、こうした美意識は、唐代の詩人、白居易とも通ずると感じました。

そういえば、以前の公開講座で、
薔薇を詠じた白居易詩について話したことがありますが、
それは、このカタログの展覧会に連携する講座であったことを思い出しました。

シダネルは、ジェルブロワという町に構えた自宅の庭に薔薇園を作り、
この古い街を、薔薇でいっぱいにしたそうです。
一方、白居易も、自宅の庭園を非常に愛し、その様子を詩文に描写しましたし、
また薔薇の花を、まるで人を愛しむかのように詠じてもいます。

自然物に向かって、人に対するかのように語りかける詩人と、
庭や窓辺に咲く花やテーブルなど、日常生活の中の情景を愛しみながら描く画家と、
その感性において共鳴するものがあるように感じます。

19世紀末のフランスの画家と、9世紀の中国の詩人と、
こんなにかけ離れていても響き合うものがある、ということは、
日常の中に美を見出して表現するということの普遍的価値を示唆しているでしょう。

白居易の作品は自分の専門ではないけれど、
縁あって、これを読む経験を積んできてよかったと思いました。

2020年12月11日

*監修・執筆:ヤン・ファリノー=ル・シダネル、古谷可由
翻訳:古谷可由、小林晶子