種まきの作業
こんにちは。
始めたばかりの『曹集詮評』の校勘作業、
当初は、丁晏が書き込んでいる異同についてのみ、
そこに指摘された文献に当たって確認するつもりだったのですが、
これはきちんとやらないとだめだと思い直しました。
比較の対象となっている文献を詳しく見ると、*1
指摘された部分以外のところにも文字の違いがあったり、
細かいところで丁晏の指摘どおりでない文字があったりしたからです。
たいへんな作業を経て成ったはずの丁晏纂・葉菊生校訂『曹集詮評』ですが、*2
やはり人の手と目による作業ですから、間違いは当然あるでしょう。
後から気付いた者が随時修正してゆけばよいのだと思います。
こわいのは、決定版テキストとして全面的に寄りかかってしまうことです。
早い段階でこのことに気づけて幸運でした。
すんでのところで、いい加減な作業を重ねてしまうところでした。
香港中文大学中国文化研究所の『曹植集逐字索引』にも詳しい校勘が記されていますが、*3
やっぱり自分の目で確認をした方がよいと思います。
今きちんとやっておくと、後になって過去の自分に助けられます。
2021年1月6日
*1 たとえば、今日当たったところでは、隋の『北堂書鈔』、唐の『藝文類聚』『初学記』、北宋の『太平御覧』といった、六朝期のテキストをよく保存している類書など。
*2 丁晏纂・葉菊生校訂『曹集詮評』(文学古籍刊行社、1957年)の出版説明によると、本書は、明の万暦年間の、休陽の程氏による刻本を底本として、明の張溥本(『漢魏六朝百三名家集』)、『文選』を用いて校訂を加え、各種の類書を参考にして佚文を集め、欠落を補正したもので、比較的完備した善本であるという。
*3 魏晋南北朝古籍逐字索引叢刊・集部第九種『曹植集逐字索引』(中文大学出版社、2001年)。