曹植「朔風詩」と「雑詩六首」
こんばんは。
曹植の「朔風詩」と、「雑詩六首」其一との類似性については、
かつてこちらで述べたことがあります。
その段階では、まだ直観的仮説の域を出なかったのですが、
先日来、「朔風詩」を分析してきて、それが確信になりつつあります。
「朔風詩」と「雑詩六首」其一との間には、幾つかの共通点が認められます。
まず、「舟」という要素を共有していること。
それから、詩中の人物が、南方にいる人物に思いを寄せていること。
その遠くに離別している人物に会うことができないこと。
では、その南方にいる人物とは誰か。
それは、「贈白馬王彪」詩(『文選』巻24)が贈られた曹彪ではないか。
彼は、黄初四年(223)当時、まだ白馬王ではなく、孫呉と接する地の呉王でした。
そして、「朔風詩」の中で「君」と詠われているのは文帝曹丕を指すでしょう。
『文選』巻29に、「朔風詩」と「雑詩六首」とを続けて収録するのは、
あるいは、両作品をあわせて収録する先行作品集をそのまま襲った結果かもしれません。
「雑詩六首」すべての成立年を黄初四年とする李善注の是非はともかく、
(六首はひとまとまりかと考えたこともありますが、まだ保留です)
少なくとも「朔風詩」と「雑詩六首」其一との関連性は、
非常に濃厚であるような感触です。
2021年3月15日