日月を連ねる
こんにちは。
先日こちらでも言及した曹植「与陳琳書」の中に、
「連日月以為佩(日月を連ねて以て佩と為す)」という句があります。
表面上これに似た辞句が、昔のノートに記されていました。
(五言句型を為すという点で目に留まったものです。)
『漢書』巻21・律暦志上にいう、
「日月如合璧、五星如連珠(日月は璧を合するが如く、五星は珠を連ぬるが如し)」、
また、これとほぼ同一の、『桓譚新論』(『太平御覧』巻329)にいう、
「日月若合璧、五星若連珠」がそれです。
更に調べてみると、この対句は他の書物にも散見するものでした。*
『宋書』巻27・符瑞志上、司馬彪『続漢書』天文志上、
『旧唐書』巻33・暦志二、同巻79・傅仁均伝、『新唐書』巻25・暦志一にも、
ほとんど同一の対句が見えています。
『漢書』の記述は、前漢太初元年(BC104)の出来事、
『桓譚新論』は周の武王、『宋書』は堯、『続漢書』は三皇のことについて、
『旧唐書』『新唐書』では、いずれも暦法をめぐる説明や論駁の中に、
前掲の対句が、ほとんど形を変えずに見えています。
ということは、「日月如合璧、五星如連珠」は、
ある固有の歴史的事件に対してのみ用いられる辞句ではなくて、
ある特別なめぐり合わせで現れる、天文上の現象を指して言うのでしょう。
なお、『文苑英華』巻3・天象三には、「日月如合璧賦」三首が収録されています。
以上に述べたことは、中国の天文学に詳しい方々には常識なのかもしれませんが、
自分への覚書として、ここに記しておきます。
先に示した曹植「与陳琳書」の辞句、
あるいは、それとの関連性がほの見えた成公綏による宮廷歌曲の歌辞と、
ここに記した表現との影響関係については、もう少し精査する必要があると思います。
2021年5月19日
*台湾・中央研究院の漢籍電子文献資料庫によって検索した。