教員としての喜び

こんにちは。

今年も、演習科目で、白居易と元稹との交往詩を読んでいます。
今日、前回の振り返り課題をまとめていて、非常にうれしくなりました。
回を追うごとに、調べ方が深くなっているからです。

たとえば、白居易「寄元九」詩(『白氏文集』巻九、0407)に見える次の句、

況随白日老  況んや白日に随(したが)ひて老い、
共負青山約  共に青山の約に負(そむ)けるをや。

この「青山約」の意味を保留としていたところ、
ある学生は、前回、授業中に紹介したサイト「寒泉」をさっそく利用し、
(今、図書館が使えませんから、ネット上で調べたのですね。)
次のような調査・考察をしていました。

・「青山約」が「奇元九」詩以外で使われている例を調べたところ、……
・「青山」で調べてみると、「白髪」と対となっていることが多い傾向がうかがえる。
・「青山」の意味には、①青々と木の茂っている山。②墓地という意味がある。
・以上のことを考え合わせると、「青山約」には、②の意味が強く出ているのではないか。

こういうレポートに出会うと、教員をやっていてよかったと感激します。
学生たちがそれぞれに、ひとつずつ目の前の世界が明るく開けていく体験をしている、
そのことに立ち会うことができることこそが、教員の喜びです。

この科目も含めて、今期担当している授業はすべて選択科目です。
特に、この演習科目は、本命は別にあって受けてみたという学生が多いと聞きます。
そういう、ちょっと脇道へ行ってみようか、という姿勢がいいです。
自分から、興味本位で触れたものには拾い物があります。

なお、以前この詩に訳注を付したとき(こちらの著書№3)、
私は前記のことに気づけていませんでした。

考え直す必要があると思っています。

2021年5月23日