再び平賀周蔵の宮島詩

こんばんは。

『藝藩通志』巻32を通覧するに、
宮島に関わる漢詩を最も多く残しているのは、
江戸期安芸の国の漢詩人、平賀周蔵(1745―1805)です。

その詩作の背景を知る手掛かりを求めて、
彼の詩集『白山集』『独醒庵集』の影印を入手し、*
そこに収録されている作品と、『藝藩通志』とを照合してみました。
すると、作品の配列において、両者間には齟齬のないことがわかりました。
『藝藩通志』の編者は、宮島を詠じた平賀周蔵の詩を、
『白山集』『独醒庵集』に収載する順番どおりに書き写していったようです。

『白山集』『独醒庵集』は、
五言古詩、五言律詩、七言絶句等々といった詩体別に作品を収載しており、
制作年代順に並べるというような編集方針は取っていません。
ですから、すぐに平賀周蔵の詩作の背景を知ることはできそうにありませんでした。

ただ、もしかしたら、この二種の漢詩集の中には、
宮島に関する詩がまだ幾つか埋もれている可能性があるように感じました。

まず、「厳島」という語を詩題に含みながら、『藝藩通志』に未収録の詩が一首ありました。
(『白山集』巻4所収の「遊厳島舟発港口五更値雨」です。)

また、両詩集の中で、特に『藝藩通志』に収録する作品の前後を注意深く見れば、
固有名詞こそ含まないけれど、実は宮島を詠じている、という詩が見つかるかもしれません。
同じ詩体であれば、同じ機会に作られた作品は連続して収載されているでしょうから。

2022年7月26日

*『白山集』五巻は寛政七年(1795)刊、『独醒庵集』五巻は寛政十三年(1801)に刊行されています。私は内閣文庫から複写・製本されたものを取り寄せましたが、国立公文書館デジタルアーカイブで自由にダウンロード・閲覧ができます。