奇跡を起こした話
こんばんは。
以前こちらでも紹介しましたが、
曹植の「黄初六年令」「鼙舞歌・精微篇」等には、
奇跡を引き起こした人物として、鄒衍や杞梁の妻が挙げられています。
それらは、直接的には『論衡』感虚篇の影響だろうと先に指摘しました。
けれども、鄒衍と杞梁の妻とを対で挙げる例は、
『後漢書』劉瑜伝に引く劉瑜の上書の中にも、次のように見えていました。
鄒衍匹夫、杞氏匹婦、尚有城崩霜隕之異。
鄒衍は匹夫、杞氏は匹婦なれども、尚ほ城崩・霜隕の異有り。
その李賢注には、『淮南子』(佚文)、『列女伝』(貞順篇)が引かれています。
こうしてみると、彼らの不思議な話は当時広く知られた言い伝えで、
しかも、一対の故事として言及されることが多かったと言えるかもしれません。
話の性格としては、昨日述べた、熊渠・李広の逸話と類似しているようにも感じられます。
なお、劉瑜という人物は、前掲の『後漢書』本伝によると、
年若くして経学を好み、とりわけ図讖・天文・歴算の術に長けていたといいます。
後漢時代の経学は、こうした預言めいた傾きを含んでいたのでしょうか。
2022年8月26日