風流を支えた素封家
こんばんは。
明後日の公開講座で、
「安芸国の漢詩人、平賀周蔵が詠じた宮島遊覧」と題して話します。
これまでにもこちらで何度か言及したことのある話題ではあるのですが、
このたび準備をする中で、改めて気づかされたことがあります。
それは、平賀周蔵らの超俗的な交遊を支えた、当島の豊かな民間人の存在です。
こちらで紹介した「夏日陪滄洲先生遊嚴島過飲壺中菴」詩の末尾に、
次のような句が見えていました。
歓興何辞酔 感興が高じては、どうして酔いしれるのを辞退しようぞ。
素封有酒泉 無官のご大臣は酒の湧き出る泉をお持ちだ。
この「素封」は、こちらで紹介した「題嚴島壺中庵」詩に、
仙醞醸来誰得同 仙界の美酒が出来上がって、これを誰と共に酌み交わせるだろうか。
主人高興有壺公 主人は、かの壺公のいることをたいそう喜んだ。
として登場する「主人」でしょう。
美酒を醸造し、共に飲む仲間として「壺公」のいることを嬉しそうに想起しています。
「壺公」は、こちらで推定したとおり、広島在住の医師、笠坊文珉でしょう。
平賀周蔵は、自身のよき理解者であり友人である笠坊文珉を通じて、
赤穂の赤松滄洲と懇意になり、三人連れ立って宮島を訪れ、
「壺中庵」で酒宴をほしいままにしています。
その草庵の主で、酒を無尽蔵に提供している「素封」が、
三人の超俗的な遊びの背後を支えていることに思い至りました。
このような人物が具体的に誰であったのか、
壺中庵はどこにあったのか、等々、
お心当たりのある方々がいらっしゃるかもしれません。
宮島当地で開催される公開講座が楽しみです。
2022年9月12日