曹植「洛神賦」と同時代の作品

先日述べたことについて、
先行研究にすでに指摘がないか、いくつか当たってみました。

その中で、鈴木崇義氏の所論に教えられたのが、*
曹植と同じ時代の文人たちにも、同テーマの作品があるということです。

『藝文類聚』巻79所収の、楊修・王粲・陳琳による「神女賦」、
及び『文選』巻30、陸機「擬古詩」の李善注に引く応瑒の作品がそれです。

そこで、これらの作品を確認してみたところ、
曹植の描く洛神のような、自らを語る神女は登場していませんでした。

鈴木氏によると、宋玉以来、前掲の建安文人たちに至るまで、
神女を取り上げる賦作品は見られないとのことです。

すると、先に述べたような特徴を持つ曹植「洛神賦」は、
この系統の作品において、画期的なものであったと見なし得るかもしれません。

では、曹植のその画期性はどこから生じたものなのでしょうか。

2023年12月5日

*鈴木崇義「曹植「洛神賦」小考」(『中国古典研究』53号、2008年)を参照。