曹植「鼙舞歌」五篇の訳注を終えて
本日、やっと曹植「孟冬篇」の訳注を終えました。
(多々あろうかと思われる不備や誤りは随時訂正していきます。)
本詩は、曹植「鼙舞歌」五篇の其五で、
皇帝の狩猟とその後に催される饗宴の様子を描く楽府詩です。
ただ、狩猟とはいっても、実際に野外で行われるそれの実写というより、
やや芝居がかった筆致の描写であるように感じられます。
たとえば、直近ではこちらに記した、慶忌や孟賁のような勇者の様子を描写する、
「張目決眥、髪怒穿冠(目を張りて眥を決し、髪は怒りて冠を穿つ)」が挙げられます。
彼らがもし実際に狩猟に従事している勇者たちならば、
このように見得を切っている暇はないのではと思ってしまうところですが、
これは、現実の彼らの様子がどのようであるかとは関わりなく、
作者がそのように表現したということです。
曹植の描写の筆致は、非常に作り込まれた印象を読者に与えます。
このことは、たとえば張衡の「西京賦」(『文選』巻2)に特徴的な表現、
特に皇帝の狩猟や宴席風景を描く辞句がよく摂取されていることからもうかがえます。
曹植「孟冬篇」は彼の「鼙舞歌」五篇のひとつですから、
他の四篇の「鼙舞歌」と同じく、宴席という場での披露を前提としていたでしょう。
その序にも「成下国之陋楽(下国の陋楽と成す)」と記されているとおりです。
この作品群は、どのような要素から成り立っているでしょうか。
そこから、当時の宴席芸能の有り様を、総体として推し測ることができるでしょう。
2025年9月25日