宋本『曹子建文集』

昨日から、曹植「当車以駕行」(05-35)の訳注作業に入りました。

ここまでの訳注稿では、基本的に丁晏『曹集詮評』を底本とし、
必要に応じて、当該作品を収載する類書や諸々の作品集との異同を記してきました。

ところが、ふと思い立って宋本『曹子建文集』を開いてみたところ、
本作品は、題名から本文から丁晏『詮評』との間にかなりの異同があって、
これまで、宋本との校勘をそれほど重要視してこなかったことに恥じ入りました。

丁晏の『曹集詮評』は、明万暦休陽程氏刻本十巻を底本としています。

現代の私たちは、丁晏の目睹できなかった宋本を容易に見ることができます。
それなら、この恩恵に浴しないわけにはいかないでしょう。

今手元にある『宋本曹子建文集』(国家図書館出版社、2021年)の、
劉明氏による「序言」には、次のように記されています。

宋代の十巻本系統の曹植集で今に伝わるものには二種あって、
ひとつは『四庫全書総目』にいう「南宋嘉定六年本」で、四庫全書本はこれに拠る。
もうひとつは瞿氏鉄琴銅剣楼旧蔵、現上海図書館所蔵の宋刻本『曹子建文集』で、
これは、国内外の孤本である。

孤本というものの扱いには詳しくありませんし、
何でも古ければ古いほど正しいと信じているわけではありませんが、
重要視すべきテキストであることには違いありません。

同じ宋代に成った『楽府詩集』とは、
関係の近さを感じさせるものが認められるかもしれません。

公開済みの訳注稿電子資料の[曹植の全作品テキストと校勘]で、
宋本との校勘によって改めるべき内容が出てきたら、
これから随時修正していきます。

2025年10月8日