曹魏と黄帝
昨日、曹操の楽府詩「駕六竜・気出倡」に言及して、
それが詠ずる仙界を行く王者の有り様は、黄帝を想起させることを述べました。
そういえば、五行相生説によると、魏は土徳です。
『三国志(魏志)』巻2・文帝紀の裴松之注に引く『献帝伝』に、
給事中博士蘇林・董巴の上表を載せてこうあります。
魏之氏族、出自顓頊、与舜同祖。……
舜以土徳承堯之火、今魏亦以土徳承漢之火、
於行運、会于堯舜授受之次。
魏の氏族は、顓頊より出で、舜と祖を同じくす。……
舜は土徳を以て堯の火を承け、今魏も亦た土徳を以て漢の火を承け、
行運に於いて、堯舜授受の次に会す。
他方、黄帝も土徳です。
『藝文類聚』巻11の「黄帝軒轅氏」に引く『春秋内事』に、
「軒轅氏以土徳王天下(軒轅氏は土徳を以て天下に王たり)」といい、
また、曹植「黄帝賛」(『藝文類聚』巻11)にも、
「土徳承火、赤帝是滅(土徳もて火を承け、赤帝は是れ滅す)」とあります。
このように、曹魏と黄帝とは同じ土徳です。
だから、曹操はその「気出倡」で、
黄帝を思わせる足跡を取る王者を詠じたのかもしれません。
ただ、曹操の時点ではまだ、後漢王朝は魏に取って代わられてはいませんから、
黄帝軒轅氏の名は表に出すことはできなかっただろうと思います。
曹植の仙界を詠ずる詩歌に、黄帝軒轅氏への言及が見えることも、
上述のことと何らかの関係があったのかもしれません。
2025年12月8日