成立背景の探究を求める詩
本日、「駆車篇」の訳注稿を公開しました。
本文を訓み下し、通釈をしてみても、
依然として趣旨の分かり難い詩であることには変わりありません。
むしろより一層、不明な部分が際立ってきました。
なぜそのようなことを言い出したのか分からない、
また、詩のみでは意味が完結しない等々、不明瞭な点が多い作品は、
その背景を視野に入れてやっと解釈が可能となる場合が多いように感じます。
本詩の成立背景として、
黄節、趙幼文、曹海東の各氏は、
魏の明帝の太和年間に、蒋済が上書した封禅の儀のことを挙げています。*1
他方、徐公持は本詩を建安年間の作としています。*2
これは、曹操の長寿を祈念し、言祝ぐ詩として解釈するものです。
不明な部分を洗い出し、掘り下げていけば、
そこから、その成立背景を絞り込んでいけるかもしれません。
2025年12月9日
*1 黄節『曹子建詩註』(中華書局、1976年重印)p.109、趙幼文『曹植集校注』(人民文学出版社、1984年)p.406、曹海東『新訳曹子建集』(三民書局、2003年)p.260~261を参照。
*2 徐公持『曹植年譜考証』(社会科学文献出版社、2016年)p.250を参照。