「清商三調」と「大曲」

こんばんは。

『宋書』楽志三に収載する「清商三調」の中には、
同書に続けて引く「大曲」と楚調「怨詩行」とは含まれないのではないか、
と推し測れることを昨日述べました。

このことについて、ひとつ傍証を補足しておきます。

『楽府詩集』巻43に載せる「大曲」の説明に、
編者の郭茂倩は、『宋書』楽志、次いで『古今楽録』を引いています。

昨日、『宋書』楽志三所収「清商三調」とよく重なると指摘した「荀氏録」は、
『楽府詩集』が引く『古今楽録』に引用されて今に伝わる文献です。

そして、『古今楽録』の撰者である陳の釈智匠は、
必ずや西晋時代の荀勗の歌曲目録を目睹できていたはずです。
一部の歌曲について「今不伝」といったコメントが付されているのは、
まさしく、彼が「荀氏録」を参照できる状態にあったことを物語っています。

もし「大曲」について「荀氏録」が何らかの記述を残していれば、
釈智匠は『古今楽録』にそれを書き留めたはずですし、
郭茂倩は『楽府詩集』にその『古今楽録』を引用したでしょう。

ところが、上記のとおり、『楽府詩集』にはそれが無いのです。
したがって、「荀氏録」には「大曲」に関わる記録はなかったと見るのが妥当です。

2022年5月11日