『八幡八景』に集った人々
過日少し触れましたが、
先週末、東京都立中央図書館の加賀文庫にて、
正徳六年、昭和九年の写本『八幡八景』を見せていただきました。
「八幡八景」は柏村直條の発案に成ったものですが、
それらの八題に寄せられた漢詩・和歌・発句を縦覧する中で、
「厳島八景」文芸に縁のある人々の名が頻見することに気づきました。
たとえば、風早公長の父である実種や、里村昌純は予想したとおりでしたが、
万福寺の住持、悦峰も漢詩を寄せているのには驚かされました。
悦峰は、黄檗宗の僧侶たちによる「厳島八景」詩の序を書いた人物です。
(悦峰については、こちらの注に記した拙論をご参照ください。)
そして、悦峰はその序の中で、
宮島の各地を歩き回り、八景題を選ぶ直條の姿を書き留めています。
(この序は、後年出版された『厳島八景』には収録されなかったのですが。)
「八幡八景」に集った人々を視野に入れることによって、
「厳島八景」文芸の隆盛は、柏村直條に由るところが大きいと確信しました。
2023年12月4日