『文選』所収の「公讌詩」

こんにちは。

『文選』巻20「公讌」所収作品で、
魏人のものとしては、曹植、王粲、劉楨の「公讌詩」、
そして、これらの後に応瑒「侍五官中郎将建章台集詩」が続きます。

曹植作品がこの詩群の冒頭にあることについて、
『文選』李善注は、次のとおり疑義をさしはさんでいます。

子建在仲宣之後、而此在前、疑誤。
  曹植は王粲の後の人なのに、ここでは前に収録されている、
  それは、おそらくは誤りであろう。

この李善の疑問に対して、
私は必ずしも『文選』編者の誤りではないかもしれないと考えます。

もともと、「公讌詩」と題する作品集のようなものがあり、
その巻頭に、魏の公子曹丕の弟である曹植の作品が置かれていた。
その作品集から、曹植、王粲、劉楨の作をまるごと引いたのが『文選』である。
常軌から外れていると見えるこの作品配列は、そのもととなった作品集の名残である。

という推測が成り立つかもしれないと思ったからです。

『文選』は、すでに存在していた作品集から選りすぐったものと推定されています。*
ですから、上述のようなことは、十分考え得ることだと思いました。

ちなみに、応瑒の「侍五官中郎将建章台集詩」は、題名が「公讌詩」ではありません。
先に想定した「公讌詩」の作品集から、彼の作は漏れていたのかもしれません。

2021年11月18日

*岡村繁「『文選』編纂の実態と編纂当初の『文選』評価」(『日本中国学会報』第38集、1986年。『文選の研究』(岩波書店、1999年)に収載)を参照。