『藝文類聚』に引く「言志」の詩
こんばんは。
『曹集詮評』を底本として、曹植の諸テキストを校勘しています。
その中で、『藝文類聚』巻26「言志」に「魏陳思王曹植詩」として収載された佚詩、
慶雲未時興 慶雲 未だ時ならずして興こり、
雲竜潜作魚 雲竜は潜(ひそ)かに魚と作(な)る。
神鸞失其儔 神鸞 其の儔(ともがら)を失ひて、
還従燕雀居 還(かへ)って燕雀に従ひて居る。
を確認していて少なからず驚いたのが、
この後におびただしい数の阮籍「詠懐詩」が続いていたことです。
収載されている順番どおりに列記すれば、次のとおりです。
作品番号は、基本、多くの注釈者が依拠する『詩紀』のそれを示し、
『藝文類聚』に収載する第一句を挙げます。
四言:「天地烟熅」、「月明星稀」
59「河上有丈人」、45「幽蘭不可佩」、31「駕言発魏都」、
71「木槿栄丘墓」、34「一日復一朝(朝字、類聚は日に作る)」、
43「鴻鵠相随飛」、46「鷽鳩飛桑楡」、03「嘉樹下成蹊」、
04「天馬出西北」、05「平生少年時」、09「歩出上東門」、
15「昔年十四五」、20「徘徊蓬池上」、08「寧与燕雀翔(1句目は灼灼西隤日)」
10「北里多奇舞」、「南国有佳人」(曹植「雑詩六首」其四)、01「夜中不能寐」
この後は、晋の傅玄の雑詩、張翰の詩、張協の詩(以下省略)と続きます。
『文選』は、「詠懐」という項のもと、
阮籍「詠懐詩十七首」を収載していますが(巻23)、
『藝文類聚』では、「言志」という括りで、
阮籍詩に先立って、曹植詩が置かれていたことに意表を突かれました。
しかも、阮籍の「詠懐詩」として引かれた一首が、まぎれもない曹植「雑詩」でした。
曹植と阮籍との間に、通底するものがあると初唐の人々は見たのでしょうか。
2021年10月28日