上演される神仙

こんばんは。

仙人たちは、書物の中に存在していたばかりではなく、
歌劇のような様態の宴席芸能の中にも登場していたらしく思われます。

後漢の張衡(78―139)の「西京賦」(『文選』巻2)に、
平楽観でくつろぐ皇帝の前で披露された様々な芸能、
角觝(力比べ)、鼎の持ち上げ、旗竿のぼり、ジャグリング、綱渡りなどに続いて、
次のような描写が見えています。

女娥坐而長歌  娥皇と女英は坐って声を長く引いて歌い、
声清暢而蜲蛇  その声は清らかに伸びやかに出でて緩やかな渦を巻く。

洪崖立而指麾  洪崖は立って指揮を取り、
被毛羽之襳襹  軽やかな羽毛の衣装を羽織っている。

ここに描かれている洪崖は、
『文選』李善注が引く薛綜注に「三皇の時の伎人なり」と説明する一方、
葛洪『神仙伝』には、衛叔卿と共に博奕に打ち興じた仙人として記されています。

また、少し時代は下りますが、
西晋の陸機(261―303)の「前緩声歌」(『文選』巻28)にも、
仙人たちの集う、この世ならざる宴の様子を描いた中に、
黄帝の楽師、太容と対を為して、歌を歌う洪崖の姿が次のように見えています。

太容揮高絃  太容は高い調子の絃を奏で、
洪崖発清歌  洪崖は清らかな歌声を発する。

当時の人々にとって仙界は、書物の中に実在するばかりか、
宴という場にリアリティをもって出現するものだったのかもしれません。
そして、遊仙詩というジャンルは、そうした場が生み出したものなのかもしれません。

2021年7月15日