亡き父への思い
曹操が亡くなった220年(建安25年、延康元年、黄初元年)、
父の後を継いで魏王となった曹丕に向けて、曹植は次のような上表を奉っています。
『曹集詮評』巻7所収「請祭先王表(先王を祭らんことを請ふ表)」です。
少し長くなりますが、全文を紹介します。
臣雖比拝表、自計違遠以来、有踰旬日、垂竟夏節方到、臣悲感有念。
先王公以夏至日終、是以家俗不以夏日祭、至於先王、自可以令辰告祠。
臣雖卑鄙、実禀体於先王。
自臣雖貧窶、蒙陛下厚賜、足供太牢之具。
臣欲祭先王於北河之上。
羊豬牛臣自能辦、杏者臣県自有。
先王喜食鰒魚、臣前以表、得徐州臧覇鰒二百枚、足以供事。
乞請水瓜五枚、白柰二十枚。
計先王崩来、未能半歳。臣実欲告敬、且欲復尽哀。
わたくしは先ごろ上表いたしましたとはいえ、自分で計算してみしたところ、上表文が手を離れてから、もう十日を過ぎ、ついに夏が到来する季節になろうとしておりまして、わたくしは悲しみのあまりこのことが思われてなりません。
先の王公(曹操の父、曹嵩)は夏至の日に逝去されたので、このため我が家の習慣として夏には先祖を祭りませんが、先の王(曹操)に至って、ご自身で良き時を選んで祭祀を執り行うことを可とされました。
わたくしは卑しい田舎者ではありますが、実に先王から身体を受け継いだ人間です。
わたくしは貧しいとはいえ、陛下から手厚い下賜を蒙りましたおかげで、お供え物は十分にございます。
わたくしは先王を黄河の北のほとりでお祭りしたいと存じます。
羊・豚・牛はわたくしが自分で用意できますし、アンズはわたくしの県にございます。
先王はアワビがお好きでいらっしゃいましたが、わたくしは先に上表により、徐州の臧覇からアワビ二百枚を手に入れましたので、十分お供えすることができます。
どうか水瓜五枚と白柰(ナシ)二十枚をお恵みくださいますようお願い申し上げます。
数えてみれば、先王の崩御から、まだ半年も経っておりません。わたくしは心から父に対する敬愛の気持ちを告げ、また哀悼の意を尽くしたく存じます。
供物の内容が極めて具体的に示されているところに、
曹植の亡き父をお祭りしたいという気持ちの強さが切々とうかがえます。
また、魏王曹丕に対する謝意も示されています。
ですが、この上表は曹丕に許可されることはありませんでした。
その理由については、また明日に。
2020年1月13日