似ている言葉
こんばんは。
曹植「愁霖賦」(『曹集詮評』巻2)は、
「迎朔風而爰邁兮(朔風を迎へて爰に邁く)」という語に始まります。
ちょうど今読んでいる「朔風詩」(『文選』巻29)の冒頭にも、
「仰彼朔風、用懐魏都(彼の朔風を仰ぎて、用て魏都を懐ふ)」とあります。
では、同じ「朔風」という語が使われていることを根拠に、
両作品が、同じ時期の、同じ背景のもとに生まれたものだと言えるでしょうか。
一語の一点が共有されているからと言って、そんな判断はできません。
言葉は基本みんなのものですから、このレベルの一致は他にいくらでもあるでしょう。
他方、「朔風詩」は、「失題」(『曹集詮評』巻4)、「雑詩六首」其一(『文選』巻29)、
そして、「贈白馬王彪」(『文選』巻24)に共通する要素を持つと先に述べました。
そう判断したのは、複数の言葉が組み合わさって成る発想の類似性からです。
なお、「愁霖賦」を伝える『藝文類聚』巻2には、
曹植の作品以外に、曹丕、応瑒の同題目の作品も収録されています。
題目を同じくする作品が複数名の文人に見られる場合、多くは競作されたと考えられます。
そして、応瑒の没年(217)から、この賦の成立は建安年間と推定できます。
出征の途上で設けられた宴席での作でしょうか。
一方、「朔風詩」に描かれているのは、南北に引き裂かれた者の離別の悲哀です。
その成立年代は、その内容から見て、建安年間とは思われません。
今述べたこの部分、これが第三者にも通じるように説明できればよいのですが。
2021年2月25日