傅毅と第一古詩群(承前)
こんにちは。
昨日ふと思いついたことの続きです。
古詩の中でも別格扱いの一群は、
確認できる範囲の作品について言うならば、
『文選』巻29所収「古詩十九首」の中に、ほとんど含まれています。
ただ、この十九首の中には、別格でない古詩も、それなりの数、混じっています。
その、別格の諸篇と、そうでない諸篇との収載状況は、以下のとおりです。
『文選』巻29「古詩十九首」 | 陸機所擬古詩 | 枚乗「雑詩」 | 『玉台新詠』巻1「古詩八首」 | 傅毅の詩 | |
○ | 其一「行行重行行」 | 其一 | 其三 | ||
○ | 其二「青青河畔草」 | 其五 | 其五 | ||
○ | 其三「青青陵上柏」 | 其八 | |||
○ | 其四「今日良宴会」 | 其二 | |||
○ | 其五「西北有高楼」 | 其十 | 其一 | ||
○ | 其六「渉江采芙蓉」 | 其四 | 其四 | ||
○ | 其七「明月皎夜光」 | 其十二 | |||
△ | 其八「冉冉孤生竹」 | 其三 | ◎ | ||
○ | 其九「庭中有奇樹」 | 其十一 | 其七 | ||
○ | 其十「迢迢牽牛星」 | 其三 | 其八 | ||
? | 其十一「迴車駕言邁」 | ||||
○ | 其十二「東城高且長」 | 其九 | 其二 | ||
○ | 其十三「駆車上東門」 | 「駕言出北闕行」 | |||
其十四「去者日以疎」 | |||||
其十五「生年不満百」 | |||||
其十六「凛凛歳云暮」 | 其二 | ||||
其十七「孟冬寒気至」 | 其四 | ||||
其十八「客従遠方来」 | 其五 | ||||
○ | 其十九「明月何皎皎」 | 其六 | 其九 |
以上、左端に○を付したものが、別格扱いの古詩群に属する作品です。
これに、『玉台新詠』巻1の枚乗「雑詩九首」其六「蘭若生春陽」を加えた13首が、
現在、別格扱いの古詩(第一古詩群)として確かだと認められるものです。*
さて、昨日見たとおり、『文心雕龍』明詩篇には、
枚乗の作と伝わる古詩のうち、その「冉冉孤生竹」だけは傅毅の作だと断定されていました。
今かりに、この一群を、『文選』編纂者が目とした古詩群Aとしましょう。
すると、『文選』巻29所収「古詩十九首」の其一から其十三までは、
一首を除いて、すべてが連続して古詩群Aに属する詩です。
続く「古詩十九首」其十四から十八までは、古詩群Aには含まれないものです。
そして最後の一首「明月何皎皎」は、古詩群Aに含まれるものです。
古詩群Aとは、先にいう別格の古詩群(第一古詩群)に傅毅の作を加えたものです。
傅毅の「冉冉孤生竹」は、陸機「擬古詩」の模擬対象となっていません。
ということは、『詩品』上品・古詩にいう「陸機所擬十四首」は、
この傅毅の作を除いて十四首あるということでしょう。
では、あと一首はいずれか。
そこで注目されるのが、其十一「迴車駕言邁」です。
その前後に古詩群Aの詩が連なっていて、ここだけ第一古詩群でないのは奇妙です。
未詳だった「陸機所擬十四首」の最後の一首はこれではないか。
これがこのたびの思い付きです。
明日、この推論に少し補足説明を加えます。
2021年7月7日
*第一古詩群に属する作品の通釈を、拙著『漢代五言詩歌史の研究』(創文社、2013年)から抜き書きしてこちらにまとめました。ご参照いただければ幸いです。