初めて見た李善注

こんばんは。

『文選』李善注で、「漢書文也」というだけのものに遭遇しました。
私としては初めて見るスタイルの注記だったので、
この曹植「求自試表」(胡刻本『文選』巻37/8b)以外にもあるのかと調べてみました。

すると、類似する注記として、
班彪「王命論」(『文選』巻52/3b、4a)に「史記文」とありました。

後から出典を追記するのにコンパクトな表記にしたのか、
それとも、『史記』や『漢書』からの直接引用であることを敢えて示そうとしたのか。
「王命論」の冒頭近くには「論語文也」という注記もあって、
このような書物が見落とされるはずはないので、追記説は苦しいかもしれません。

ところで、班彪(3―54)は、その息子の班固が著した『漢書』を見ずに没していますが、
その「王命論」に対する李善注では、著者が未見のはずの『漢書』が随所に引かれています。
これは、いずれ『漢書』に流れ込んでいく記述内容だという認識からの注記なのか、
それとも、ただ単に、『漢書』に記されている内容が、
「王命論」に踏まえられているということを指摘するだけなのでしょうか。
前漢時代の出来事を注記しようとしたら、『漢書』を挙げるほかないのかもしれませんが。

2020年12月10日