曹植「当欲遊南山行」の制作年代(承前)
本日、「当欲遊南山行」(05-33)の訳注作業を終えました。
読解を終えて、やはりこれは建安年間の作と見るのが妥当だと感じました。
狩野直喜先生の学風である「心得の学」に倣って言えば。
では、どうして自分はそのように感じたのか。
それは、本詩の内容が一筋の美しい倫理観に貫かれており、
ためらいや屈折、そうした倫理観に至った紆余曲折が見えないからです。
若い曹植が心を砕いたことのひとつとして、
曹操のもとに集った人々への待遇という問題がありますが、*1
そうしたテーマが、何の衒いもなくまっすぐに詠まれている作品です。
また、表現的技巧の面から見ても極めて素直です。
まだ挫折を知らない曹植が、
父曹操の主催する魏王国の盛大なる宴席で、
その若々しい抱負を披露したのが本詩ではないかと考えます。
その点、同じ曹植の「薤露行」(05-10)と制作の背景が近いかもしれません。*2
2025年9月30日
*1 たとえばこちらをご参照ください。
*2 「薤露行」については、拙論「曹植における「惟漢行」制作の動機」(『県立広島大学地域創生学部紀要』第1号、2022年)で論究しています。