曹植とその周辺の人々

「贈丁廙」詩の解釈は、再考する必要があると先日述べました。
このことに関連して、本詩の冒頭四句も捉えなおした方がよいと考えます。

嘉賓填城闕  立派な賓客たちが宮殿を埋め尽くし、
豊膳出中厨  厨房の中からは素晴らしい食膳が運び出されてくる。
吾与二三子  私は気心知れた二三の友人たちと、
曲宴此城隅  この宮城の片隅で内輪の酒宴を設ける。

宮殿の中央で盛大に催される宴に対して、
その片隅で、気心知れた者だけで囲む私的な宴席を詠ずるとは、
ずいぶんとひがみっぽいように以前は感じていました。

ただ、そうすると続く四句とうまくつながりません。
この後には、音楽や酒肴など華やかな宴席風景が繰り広げられているのです。

そこで想起したいのが、先日提示した本詩解釈への新たな視点です。
すなわち、曹植は「朋友」に向けて魏王国への仕官の可能性を指し示している、
臨淄侯である自身のもとを去って、魏国側の人間になるよう勧めているのではないか、
と捉える見方です。

そうした別れと励ましの言葉を、
にぎやかな宴席の情景とともに詠じたのが本詩なのかもしれません。
そこに一瞬、曹植の横顔をみたような思いがしました。

2023年11月24日