現実からの浮揚

おはようございます。

曹植「上牛表」の訳注稿を公開しました。

最初この作品を読んだとき、
何を言っているのかさっぱりわかりませんでした。
最後まで読んで、右往左往してやっと腑に落ちたような具合です。

というのも、冒頭で、物の大小とその価値について述べ、
大小の対比が意味を持つことを、具体例を引きつつ論じた後に、
急転直下、この牛を献上したいと申し出るという、
不思議な展開をするからです。

最後の方に「不足追遵大小之制」という句が出てきて、
「制」という言葉にひっかかりを覚え、
それで、冒頭にいう「臣聞物以洪珍、細亦或貴」が、
物品に関するある種の規定を指していたのかと思い至りました。

もしこのように捉えることが妥当であれば、ですが、

献上物に関する現実的な決まり事に出発し、
あっという間に、その現実の向こう側に意識が浮揚していく、
それが、この曹植の文章の分かりにくさであり、魅力だと感じました。

2022年11月30日