知識人と大衆

こんばんは。

曹道衡『魏晋文学』第一章第二節「魏晋的社会状況和思潮」に、*
王莽新に抵抗したのは、赤眉ら農民軍以外に、地方豪族らがいたこと、
豪族たちは、農民にも役人に対しても、一定の影響力を持っていたことが述べられ、
その事例として、次のような記事が列挙されています。

赤眉軍をその徳でもって退却させた樊宏(『後漢書』巻32・樊宏伝)。
また、隠者の逢萌は、北海太守の招きに応じなかったために捕えられそうになったところ、
当地の人民たちがこれに抵抗して彼を守ったこと(同巻83・逸民伝)。
更に、黄巾賊から、県境に侵入しないことを丁重に約束された儒者の鄭玄(同巻35・鄭玄伝)。

こうした知識人と民衆との幸福な関係は、
今の時代からすると、非常に新鮮に感じられます。
また、少し前の中国で吹き荒れた文化大革命のことも想起されます。

曹道衡先生は、抑制のきいた筆致で、
光武帝が名士たちを集めたのは、彼らの名声を慕ったのみならず、
彼らが一般人民に対して持っていた影響力を考慮に入れたためである、と論じておられますが、
もしかしたら、先の時代のことが意識の底にあったかもしれないとひそかに思いました。
何も分かっていない者の不躾な想像です。

2021年4月24日

*『曹道衡文集』(中州古籍出版社、2018年)巻四に収載。