著者を知りたくなる論文

出自未詳の蘇李詩を追いかけている中で、
にわかに気になってきたのが『古文苑』という総集のことです。

この書物は、『文選』や歴史書には見えない作品を多く収録しています。
ですから、これまで私は、その信憑性を深く吟味することもなく便利に用いてきました。
ですが、それでよかったのか。
この書物が収録する作品はどこから採られたものなのか。

『古文苑』の素性を知りたいと、自分なりに調べてみましたが、今ひとつ埒が明かない。
ところが、本日、次の論文に出会いました。

阿部順子「『古文苑』の成書年代とその出所」(『日本中国学会報』第53集、2001年)です。

実に多くのことを教えられました。
(学会報が出たときに、なぜすぐに読まなかったのか、過去の自分を叱りたい。)

その考証は非常に精緻で、論の背後にどれほどの調査や考察が為されていることか。
そして、論を運ぶ文章がまた硬質で美しい。

このような論文を書かれたのはどんな人かとCiNiiで検索してみると、
阮籍に関する論考もおありのようです。
自分との接点をひとつ見つけてうれしくなりました。

面識のない執筆者に強くひきつけられる感覚は、実に久しぶりのことでした。
自分もしっかりしないと。

それではまた。

2020年3月12日