西方からやってきたもの

こんにちは。

昨日に続き、これも授業の準備をしていて出会った論考ですが、
沖田瑞穂氏の「連続変身の説話の系譜―花咲爺を中心として―」に惹かれました。*1
その大まかな内容は次のとおりです。

日本の昔話「花咲爺」を構成している要素の中には、
主人公が次々と姿を変えてゆく「連続変身」説話の流入が認められる。
(人が、動物、樹木、木製品へと変身し、焼かれて灰となって再生するという説話)
世界の各地に広がりを持つこの説話のモチーフを分析した結果、
この説話は、エジプト起源で西から東へと伝播してゆき、
その途中で分岐して、ルーマニア、インド、チベットへ波及したと推測できる。

これを読んで、大形徹氏の所論を想起しました。*2
漢代の馬王堆帛画に見える図像は、エジプトに起源を持つ可能性があるという論です。
こちらでも言及したことがあります。)

自分は日頃、文献に記された言葉に依拠して考察していますが、
もとより人類には、文字にはよらない文化の分厚い蓄積があるのであって、
そうした文化については、それにふさわしい研究方法があるのだろうと推察されます。

こうした異なる分野の研究に触れると、目の前が豁然と開ける思いがする一方、
自分のやっていることがいかにも微細なことのようで気後れしますが、

そこはそれぞれに価値がある、と気を取り直していきます。

2022年7月24日

*1 沖田瑞穂「連続変身の説話の系譜―花咲爺を中心として―」(『人文研紀要(中央大学)』75、2013年)。
*2 大形徹「中国の死生観に外国の図像が影響を与えた可能性について―馬王堆帛画を例として―」(日本道教学会『東方宗教』第100号、2007年)。