論文への書評

こんばんは。

前漢後期の王褒(?―前61)に、「僮約」という諧謔的な作品があります。
その内容をかいつまんで紹介すれば次のとおりです。

王褒に酒を買いに行くよう命じられた奴隷が、
これを拒否し、明文化された仕事以外はしないと言い張る。
そこで、王褒は証文を作成し、奴隷のやるべき仕事の逐一を書き連ねた。
これを一読した奴隷は、酒を買いに行く方がずっとましだったと泣き言を言った。

この文章に関する先行研究を探していて驚きました。

宇都宮清吉「僮約研究」(『名古屋大学文学部論集』5・史学第二、1953年)
この“論文”に対して、翌年、翌々年と相次いで“書評”が発表されていることです。
西村元佑氏による書評は、1954年、『史林』37(2)に、
守屋美都雄氏によるそれは、1955年、『法制史研究』1955(5)に掲載されています。

まず、論文に対する書評というものを、私は初めて目にしました。
これは、宇都宮氏の論考を心待ちにしている人々がいたということでしょう。
そしてその書評が、批評対象に対する深い理解と敬意にあふれていることに打たれました。

ここに、学術界のひとつの理想形を見たような気がします。

書評は二篇ともオンラインですぐに入手できたのですが、
宇都宮清吉論文は、文献複写を依頼しました。
届いたら、心して読もうと思います。

2021年11月2日