赤松滄洲の宮島詩
こんにちは。
赤松滄洲による平賀周蔵『白山集』の序をひととおり読み通し、
少し滄洲先生のことが身近に感じられるようになりました。
そして、その目で再び『藝藩通志』巻32を通覧していると、
「赤松鴻 赤穂文学」という文字が目に入りました。
「鴻」とは、滄洲先生の名前です。
遥望彩雲西海天 遥かに彩雲を望む 西海の天
片帆逐旦至無辺 片帆 旦を逐ひて 無辺に至る
豈思更有新知楽 豈に思はんや 更に新知の楽しき有らんとは
吹送清風満閣前 清風吹き送りて 閣前に満つ *
この詩を、自分なりに通釈すれば次のとおりです。
はるかに西海の上空に広がる美しい雲を眺めつつ、
一隻の舟が太陽を追いかけて果てしない空間へ漕ぎ至る。
思いがけなくも、更に新しい友と知り合う楽しみがあろうとは。
清らかな風がたっぷりと吹いて、我々を社殿の前へと送ってくれる。
本詩の三句目にいう「新知楽」は、
『楚辞』九歌、少司命にいう次の句を踏まえていると見られます。
(諸詩歌に頻見する句ですが、最も古典的な『楚辞』を挙げておきます。)
悲莫悲兮生別離 悲しきは生きながら別離するよりも悲しきは莫く
楽莫楽兮新相知 楽しきは新しく相知るよりも楽しきは莫し
滄洲先生の詩にいう「新知」とは、
おそらくは平賀周蔵を指すのではないでしょうか。
こちらでも少し触れましたが、
共通の友人を介して、二人がいかに意気投合する仲となったか、
赤松滄洲による『白山集』序に詳しく記されています。
2022年8月17日
* 訓読は、『宮島町史 地誌紀行編Ⅰ』(宮島町、1992年)p.546─547を参考にした。