六朝文学の萌芽

こんばんは。

曹植「与楊徳祖書」(『文選』巻42)に関連する先行研究として、
福井佳夫「曹丕の「与呉質書」について―六朝文学との関連」を読みました。*

曹丕の「与呉質書」の中に、
いずれ六朝文学にて展開していく次の四つの要素を指摘する明快な論文です。

1、書簡文を利用した文学批評
2、集団的文学活動が行われる游宴の描写
3、君臣の隔てがない親しい交友関係
4、貴顕の者による文学仲間の死への追悼

その上で、謝霊運「擬魏太子鄴中集詩」(『文選』巻30)、江淹「雑体詩」(同巻31)、
梁の昭明太子蕭統と簡文帝蕭綱、陳の公主陳叔宝、隋の煬帝楊広の書簡文の中に、
曹丕の書簡文の影響を指摘しています。

このうち、建安文壇における君臣間の上下関係の希薄さは、
拙論(こちらの「学術論文」№32)で述べたところと同じ論旨です。
この先行研究のあることを注記すべきでした。
不勉強に恥じ入るばかりです。

2020年10月3日

*『中国中世文学研究』第20号、1991年。