魚豢が捉えた文帝曹丕
こんばんは。
先日、一部を引用した魚豢の文章は、
その『魏略』で佞倖を批判する文章です(こちらの学術論文№41で全文を引用)。
その中で、少しばかりひっかかりを覚えるのが次のような記述です。
以武皇帝之慎賞、明皇帝之持法、而猶有若此等人、而況下斯者乎。
武帝(曹操)の恩賞に対する慎重さ、明帝(曹叡)の法を順守する姿勢を以てしても、
それでも、このような人々(君主にへつらい、私的な恩沢を受ける者たち)がいたのだから、
ましてこれ以下の者においては言うまでもない。
このとおり、魏王朝の初代皇帝、文帝曹丕がひとり無視されています。
曹丕は、その後に続く「斯(これ)を下る者」の中に含まれていたのでしょうか。
『魏志』裴松之注所引『魏略』に記された曹丕の事績を見ると、
もちろん王朝を統べる皇帝として行った事柄も当然記されてはいますが、
それ以上に目に付くのが、臣下たちに対する私(わたくし)的な理由による人事対応です。
具体例を、こちらの学術論文№34の第三章で挙げているので、ご覧いただければ幸いです。
(『魏略』以外の文献も引いていますが、『魏略』の記事が比較的多いです。)
このような事績を記している魚豢であればこそ、
そして、この種の不公平さにひどく鬱屈したものを抱えていた彼であればこそ、
前掲の文章において曹丕への言及が見えないのは、故意に無視した結果だと私は考えます。
2020年11月26日