傅毅と第一古詩群

こんばんは。

古詩の中には、特別な一群があるということを、かつて論証したことがあります。*
(若気の至りで、第一古詩群と命名しました。第二はありません。)

その中で、『文選』巻29所収「古詩十九首」は、
この特別な一群と、そうでない諸作品とに跨って秀作を選りすぐったものである、
ということを述べました。
このことを初めて示した資料(こちら)を、ご参考までにあげておきます。
(青山学院大学で開催された、六朝学術学会第一回例会での発表資料の一部です。)

さて、古詩の中でも、早期から別格視されてきた作品が十四首、
それが陸機「擬古詩」(『文選』巻30)の模擬対象となった古詩諸篇と重なることは、
『詩品』(上品・古詩)が指摘してくれています。

ところが、前掲資料をご覧のとおり、その十三首までは特定できるのですが、
残りの一首がなおも未詳です。

他方、『文心雕龍』明詩篇にこうあります。

又古詩佳麗、或称枚叔、其孤竹一篇、則傅毅之詞。
又古詩は佳麗にして、或いは枚叔(叔は枚乗の字)と称するも、
其の「孤竹」の一篇は、則ち傅毅の詞なり。

実は、前述の別格扱いの古詩は、
陸機の模擬対象となった古詩であると同時に、
枚乗作と伝えられる古詩とも重なる作品群なのですが、
(前掲資料をご覧いただければ幸いです。)
この『文心雕龍』の記事に拠れば、
その特別な一群の中に、一首だけ傅毅の作品が混じっていると読めます。
その傅毅の詩とは、「冉冉孤生竹」(『文選』巻29「古詩十九首」其八)です。

かの陸機議する所の十四首であり、別格とされてきた古詩群に、
この傅毅「冉冉孤生竹」は含まれません。

なぜならば、『玉台新詠』巻1において、
傅毅「冉冉孤生竹」は「古詩八首」其三として収載され、
同書同巻所収の枚乗「雑詩九首」とは並存の関係にあるからです。
先にも述べたとおり、別格扱いの特別な古詩群は、
枚乗「雑詩」として伝えられる古詩群と重なり合うのでした。
『玉台新詠』を編纂した徐陵は、
宮廷の書庫から「艶歌を撰録する」(同書の序による)際に、
傅毅作の詩が、特別な古詩群とは一線を画することを知ったのでしょう。

では、十四首を構成する残りの一首はどの詩でしょうか。
もしかしたらこれか、とわかったかもしれないこと(妄想)があります。
この続きは明日書きます。

2021年7月7日

こちらの学術論文№14が初出。こちらで見ることが可能です。