先人のご教示
先週、右往左往した結果、結局わからなかった蘇李詩の真偽について、
鈴木修次『漢魏詩の研究』(大修館書店、1967年)に詳しい論及がありました。
第二章・第四項の四「伝蘇武・李陵詩考」の、特にp.326~330です。
鈴木氏も、馮惟訥『古詩紀』が『文選』所収詩のみを蘇武・李陵の作とし、
『古文苑』に引かれている諸作品を「擬蘇李詩十首」として収録することを捉えて、
「注意するにあたいする」と記されています。(p.326)
さらに、このことに関する但し書きとして、
蘇李詩が『藝文類聚』『北堂書鈔』『初学記』といった類書に引用される場合、
上記の『文選』所収詩と『古文苑』所収詩の間に特段の区別がなされていないことも、
公平に指摘されています。
先に紹介した拙論(学術論文№28)は、『文選』所収作品に限定して論じたものですが、
そのように範囲を狭く区切ったのは、この先人の論から示唆を受けてのことでした。
(注でそのことを記しながら、すっかり忘れていました。)
ただし、鈴木氏は『古文苑』所収の蘇李詩を擬古的な作品だと断言してはいませんから、
私の注記はやや的外れというか、武断に過ぎるというか。。。
(私の至らなさは言うまでもないことなので措いておくことにします。)
鈴木先生の本は、示唆に富む指摘やヒントを惜しげもなく分け与えてくださいます。
そして、それを一度読んだからといって、こちらがすべてを咀嚼しているとは限りません。
ご教示を受け取れる時が熟するのを、ゆったりと待ってくださっているのだと思います。
それではまた。
2020年3月11日