晋楽所奏「楚調・怨詩行」の編者について

『宋書』楽志三には、
昨日言及した「大曲」十五篇に続いて、
曹植「七哀詩」に基づく「楚調・怨詩行」一篇が収録されています。

曹植「七哀詩」から「怨詩行」へのアレンジについては、
「晋楽所奏「怨詩行」考 ―曹植に捧げられた鎮魂歌―」と題して論じたことがあります。
その中で、「七哀詩」から「怨詩行」への改変点を指摘した上で、
その改変がなぜ行われたのかを究明し、副題に示すような結論にたどり着きました。

ただ、このアレンジを行った人物を、西晋の荀勗かと推測していたことは、
昨日の結論を経て、修正する必要があると今は考えています。

曹植「七哀詩」から「楚調・怨詩行」への改変者が荀勗であろうとの推測は、
荀勗の歌辞選定が、「清商三調」「大曲」「楚調」の全てに及ぶ、
と見通したことから導き出されたものです。

ですが、「大曲」の編者は、荀勗ではなく、張華である可能性の方がはるかに高い、
との結論にたどり着いた以上、先の推測は妥当とは言えません。

むしろ、「大曲」の編者がもし張華であるならば、
それに続く「楚調・怨詩行」一篇もまた、張華によってアレンジされた、
と見る方が、荀勗と見るよりも、はるかに蓋然性が高いでしょう。

それに、張華には、曹植に対する鎮魂の思いを表現する強い動機があります。
一方、荀勗の場合は、それを意識的に回避したとさえ想像されます。

なぜ、そのようなことが言えるのか。
その論拠は、昨日提示したスライド資料の中に示しています。
それは、「大曲」の中に曹植の歌辞が組み入れられている理由を述べた部分ですが、
それよりも更に明確に、「楚調・怨詩行」について当てはまるものです。

2023年9月15日