曹植と張華と陸機

張華「晋四廂楽歌十六篇」其五(『宋書』巻20・楽志二)に、
西晋王朝の徳政に応ずる瑞祥を詠じて「枯蠹栄、竭泉流」というのは、
曹植「七啓」(『文選』巻34)にいう、
「夫辯言之艶、能使窮沢生流、枯木発栄」を念頭に置いていた可能性がある、
ということを、かつてこちらで述べました。

そして、曹植「七啓」のこの表現は、
陸機の「文賦」(『文選』巻17)にも影響を及ぼし、
その「兀若枯木、豁若涸流」は、曹植の辞句を反転させたものと見られます。
このことは、かつてこちらで述べました。

ここで、陸機と曹植とをつないだのは、張華ではなかったでしょうか。

というのは、陸機と張華とは浅からぬ交友関係を持っていたからです。
(張華が陸機を庇護したと言った方が正確かもしれません。)

以前、こちらこちらで言及したことがありますが、
陸機「洛陽記」(『文選』巻24、曹植「贈白馬王彪」李善注引)の中に、
陸機が、曹植「贈白馬王彪」詩の第一句に関する疑義を、
張華にたずねて解答を得たことが見えています。

二人は、曹植作品をめぐる話題で談話を重ねていたでしょう。
そうしたやり取りの中で、前掲の対句が浮上してきたのかもしれません。

以前は、曹植と張華、曹植と陸機という、
両者間の関係性ばかりに目が向かっていたのですが、
曹植と張華と陸機という三人の連関性が見えてきたように思います。

2023年12月13日