07-11 献文帝馬表

07-11 献文帝馬表  文帝に馬を献ずる表

【解題】
魏の文帝曹丕に馬を献上することを述べた上表文。『藝文類聚』巻九十三、『太平御覧』巻八九四所収。

臣於先武皇帝世、得大宛紫騂馬一匹。形法応図、善持頭尾、教令習拝、今輒已能。又能行与鼓節相応。謹以奉献。

臣は先の武皇帝の世に於いて、大宛の紫騂馬一匹を得たり。形法は図に応じ、善く頭尾を持し、教令して拝を習はしむれば、今は輒ち已に能くす。又 能く行くに鼓節と相応ず。謹んで以て奉献す。

【通釈】
わたくしは先の武皇帝の時代に、大宛の赤馬一頭を手に入れました。筋肉や骨格はまるで絵画に描かれたようで、頭や尾をすばらしい均衡で保持し、命令してお辞儀を習わせたところ、今はもうすっかりできるようになりました。加えて、太鼓のリズムに合わせて歩むこともできます。謹んでこれを献上いたします。

【語釈】
○先武皇帝世 曹丕・曹植の父曹操(一五五―二二〇)の存命中。曹操は、建安一八年(二一三)に魏公、同二一年(二一六)に魏王となり、魏王朝が成立した黄初元年(二二〇)十一月、追尊して武皇帝と号された(『三国志(魏志)』巻一・武帝紀、同巻二・文帝紀)。
○大宛紫騂馬 「大宛」は、中央アジアのフェルガナ盆地にあった国の名。名馬の産地。『漢書』巻六・武帝紀に、弐師将軍李広利が大宛国王の首を斬り、汗血馬を得たことを記す。「紫騂馬」は、赤毛の馬。汗血馬を指していうか。
○形法応図 骨格や筋肉の付き方が、まるで絵画のように均整がとれていること。「形法」の語は、形状を見て吉凶を占う術として、『漢書』巻三十・藝文志、数術家の中に見えている。一句に類似する表現として、「洛神賦」(02-03)に「奇服曠世、骨象応図(奇服は曠世にして、骨象は図に応ず)」と。
○謹以奉献 底本、「以」の下に「表」字あり。今、『藝文類聚』『太平御覧』に従って改める。