07-17 上先帝賜鎧表
07-17 上先帝賜鎧表 先帝の賜りし鎧を上る表
【解題】武帝曹操から賜った鎧を、文帝曹丕に奉ることを述べる上表文。『初学記』巻二十二、『太平御覧』巻三五六、『北堂書鈔』巻一二一に断片を収載する。
先帝賜臣鎧、黒光明光各一領、両当鎧一領、環鎖鎧一領、馬鎧一領、今世以昇平、兵革無事、乞悉以付鎧曹自理。
先帝が臣に賜りし鎧、黒光・明光各一領、両当の鎧一領、環鎖の鎧一領、馬の鎧一領、今の世は昇平なるを以て、兵革に事無ければ、乞ふらくは悉く以て鎧曹に付して自ら理せんことを。
【通釈】
先帝がわたくしに賜った鎧の黒光と明光の各一領、裲襠の鎧一領、環鎖の鎧一領、馬の鎧一領。今の世は天下泰平で、戦争もない時代です。何卒これらをすべて、鎧を管轄する部署に手ずから納めさせてください。
【語釈】
○先帝 魏の武帝曹操。建安二十五年(二二〇)正月に崩御して武王と諡され、同年(黄初元年)十一月、武皇帝と追号された。
○領 鎧を数える助数詞。
○両当 裲襠。胸と背中の両面を覆う衣類。
○環鎖 鎧の一種。その形状は未詳。
○今世 「世」字、底本は「代」に作る。唐の太宗李世民の諱を避けた『初学記』に拠ったか。今、『太平御覧』『北堂書鈔』に拠って改める。
○昇平 天下泰平。
○兵革無事 「兵革」は、兵器や甲冑。それらを用いる機会が無い泰平の世をいう。
○鎧曹 鎧を管理する役所。
○自理 自ら処理する。『太平御覧』『北堂書鈔』にはこの二字無し。