08-03 写灌均上事令
08-03 写灌均上事令 灌均が上(たてまつ)りし事を写さしむるの令
【解題】監国謁者の潅均が朝廷に報告した罪状を書写させて、自らの戒めとすることを宣言した令。背景にある出来事として、『三国志(魏志)』巻十九・陳思王植伝、黄初二年(二二一)の条に、「監国謁者潅均希指、奏『植酔酒悖慢、劫脅使者。』有司請治罪、帝以太后故、貶爵安郷侯。其年改封鄄城侯(監国謁者潅均は希指し、奏すらく「植は酒に酔ひて悖慢、使者を劫脅す」と。有司 罪を治(ただ)さんことを請ふも、帝は太后を以ての故に、爵を安郷侯に貶す。其の年に鄄城侯に改封す)」と。『太平御覧』巻五九三所収。おそらくは全文の一部であろう。
孤前令写灌均所上孤章、三台九府所奏事、及詔書一通、置之坐隅。孤欲朝夕諷詠、以自警誡也。
孤は前に灌均が上(たてまつ)りし所の孤が章、三台九府が奏する所の事、及び詔書一通を写さしめて、之を坐隅に置く。孤は朝夕に諷詠して、以て自ら警誡せんと欲するなり。
【通釈】
わたくしは先ごろ、灌均が朝廷に奉ったわたくしの詩文、諸々の役所が奏上した罪状、及び皇帝陛下から下された詔書一通を書写させ、これを座席の傍らに置いた。わたくしは、朝な夕なにそれを諷詠して、それで自ら戒めて用心しようとしたのである。
【語釈】
○孤 王侯の自称。
○灌均 本作品の解題に示したとおり。
○三台 尚書を中台、御史を憲台、謁者を外台といい、あわせて三台と称した(『後漢書』巻七四上・袁紹伝の李賢注に引く『晋書』)。
○九府 諸々の役所をいうか。前掲の「三台」とあわせたかたちでの用例として、『晋書』巻七〇・応詹伝に「三台九府、中外諸軍、有可滅損、皆令附農(三台九府、中外の諸軍、滅損す可き有らば、皆農に附かしめよ)」と。
○詔書一通 『三国志(魏志)』巻十九・陳思王植伝の裴松之注に引く『魏書』に掲載する文帝の詔に、「植、朕之同母弟。朕於天下無所不容、而況植乎。骨肉之親、舎而不誅、其改封植(植は、朕の同母弟なり。朕は天下に於いて容れざる所無し、而して況んや植をや。骨肉の親は、舎(ゆる)して誅せず、其れ植を改封せよ)」と。