08-18 与丁敬礼書
08-18 与丁敬礼書 丁敬礼に与ふる書
【解題】
「敬礼」は、丁廙の字。この人物については、[04-14 贈丁廙]の解題を参照。『北堂書鈔』巻一〇三所載の佚文である。
頃不相聞 頃(このごろ)相聞せず、
覆相声音亦為怪 覆(ま)た相声音すれば亦た怪しまる、
故乗興為書 故に興に乗じて書を為す。
含欣而秉筆 欣(よろこ)びを含みて筆を秉(と)り、
大笑而吐辞 大いに笑ひて辞を吐く、
亦歓欣之極也 亦た歓欣の極みなり。
【通釈】
近頃、お互いに便りを交わすこともなく、といって、繰り返し声を交わすのも怪しまれるので、興に乗じて手紙を書くことにしました。湧き上がる喜びを内に含んで筆を執り、大笑いしながら言葉を口から紡ぎだします。これもまた歓喜の極みです。
【語釈】
○相聞 互いに安否を問い合う。
○覆 繰り返し。
○声音 声に出して直接語り合うことをいうか。
○歓欣之極也 「欣」字、底本には無し。今、『北堂書鈔』によって補う。